Charles Percey Snow(チャールズ・パーシー・スノー):1905年〜1980年

私はよく教育の高い人たちの会合に出席したが、 彼らは科学者の無学について不信を表明することにたいへん趣味を持っていた。 どうにもこらえきれなくなってた私は、 彼らのうち何人が、熱力学の第二法則について説明できるか訊ねた。 答えは冷ややかなものであり、否定的でもあった。 私は「あなたはシェークスピアのものを何か読んだことがあるか」というのと 同等な科学上の質問をしたわけである。 もっと簡単な質問「質量、加速度とは何か」 (これは「君は読むことができるか」というのと科学的には同等である)をしたら、 その教養高い人びとの十人中の幾人かは私が彼らと同じことばを語っていると感じたろうと、 現在、思っている。 このように現代の物理学の偉大な体系は進んでいて、 西欧のもっとも賢明な人びとの多くは 物理学にたいしていわば新石器時代の祖先なみの洞察しかもっていないのである。

「二つの文化と科学革命」(1959年度リード講演) みすず書房、p.24〜25

二つの文化 (人文的文化と科学的文化、伝統的文化と科学的文化、 人文的教養と科学的教養、人文的知識人と科学者)の乖離が 甚だしいために、思想や創造の核心で最上の機会を逃しており、 個人としても、社会としてもひどい損失であるとスノーは言う。 人類の未来に立ち込める暗雲、人口問題、地球温暖化、食料問題、環境問題、エネルギー問題、 を解決するには科学が必要不可欠であることを思うと、 二つの文化の分極は現在ではより一層問題であろう。 去年(1997年)、立花隆は「知的亡国論」(文藝春秋・1997年9月号)で、現代の日本の現状は更に悪化していることを指摘し、次のように危惧する。
現代の経済は、あらゆる意味で科学技術によって支えられていますから、 その面での知的水準が総社会的に低下しつつある社会には、はっきりいって未来がありません。
 日本の高校の理科教育は、物理、化学、生物、地学の4科目から2科目を選択履修するようになった。 科学技術が社会の基盤を構築し、社会問題解決の鍵となるこれからの社会に生きようとする若者が 欠落した科学知識しか持たないのでは未来がない。高校のカリキュラムを補う教育課程が大学で必要だろう。

C.P.Snowは物理出身の小説家だそうだ。 この本は 古典とみなせるのに、絶版になっているの残念だ。


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