「クォークとジャガー たゆみなく進化する複雑系」
ゲルマン/野本陽代:訳 草思社(1997年8月)2600円(451ページ)

徐 丙鉄(近畿大学工学部)97.12.1

予想より面白かった。物理の話もそれなりに面白いが、ゲルマンの人となりが窺える記述が面白かった。 いくつか抜き書きしよう。
ほかの人が書いた本のなかにまちがいを見つけると、私はがっかりして、 少なくともある一点でまちがっていることが明らかな著者から、何か学ぶことができるだろうか、 と考えてしまう。(p. 8)
彼(ノーバート・ウィーナー)は神童といわれて育ち、自分が並の人間でないことを世間に示さなければならないという意識から、ついに抜け出ることができなかった。MITの大学院に進んだ私は、彼が階段で寝ているのをときどき見かけたが、彼の太った身体は通行のじゃまになっていた。(p. 104)
私はまた、アインシュタインの写真や銅像の多くが、数々の素晴らしい発見をなしとげた、 ハンサムで粋なかっこうをした若者の姿ではなく、 もはや重要な貢献をすることができなくなった老年の姿になっていることを残念に思う。(p. 167)
何十年も後になって、なぜ直ちに陽電子を予想しなかったのか、と私が尋ねると、ディラックはいつもの ぶっきらぼうな調子で「臆病だっただけさ」と答えた。(p. 226)
ヴェルナー・ハイゼンベルグはいつもの形をしたタイピンをしていた。 それは、自分が量子力学を発見したという彼のプライドを示すものであった。(p. 251)
このようにズバリ言い放つところは気持ちいい。

 話は変わるが、物理学徒の間で「シュレディンガー音頭」が流行っているらしい。 こんなのは日本でしか生まれないだろうなーーー。 世界中で流行るだろうか? 是非一度ご覧になることを薦める。


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