スケーリング:大きさを変えると?

徐 丙鉄(近畿大学工学部)

ガリレオ・ガリレイは「新科学対話」次のように述べている。

人間が作るにしても、自然が作るにしても、建造物の大きさを無闇な寸法に増す ことの不可能なことが容易に分かります。ですから小さなものと同じ寸法で大き な船や宮殿あるいは寺院を造ることは不可能なのです。そんなことをすれば、 櫂や帆桁、鉄釘、その他の各部分がばらばらになってしまいます。また、自然も 並外れた大きな樹を作ることはできません。もし、そんなことをすれば、幹は自分 の重さで折れてしまうでしょう。また、人間、馬、その他の動物の骨格も、もし 背の高さを法外に高くすれば、それらが互いにもちこたえて世間並みの働きのでき るように作り上げるわけには行かないでしょう。なぜならば、この背丈の増大は、 ただ普通より固くて丈夫な材料を使用するか、あるいは骨を太くするかでなければ 不可能で、その結果動物の恰好や容貌は化け物を思わせるほど、形を変えるでしょ うから。(新科学対話」p132-133)

また、フィリップ・モリソンは興味深いエッセイの中で次のように述べている。

君がプールから水を滴らせながら出るとき、君の皮膚には薄い水の層がついている。 ・・・大雑把にいって、少なくとも君が持ち出す水の量は君の体表面積に比例して いる。
     水の量 ∝ L^2   L = 身長 
したがって、増えた重量/元の重量 という比は L^2/L^3 すなわち 1/L に比例する。 たぶん君がプールから運び出す水はグラス1杯程度であり、したがって君が運ばな ければならない体重が約1%増加する。しかし、リリパッド国人(ガリバー旅行記に 登場する小人の国の住民、体長はわれわれの1/12)では彼の体重の12%の水を 持ち出すことになり、これは重たい冬の衣料の上にオーバーコートを着ることに相当 するだろう。プールから出ることはちっとも愉快なことではないのである! もしも蝿が濡れると、その体重は2倍重くなり、蝿はまったく水滴中に捕らわれの身 となってしまう。

このように、ものの大きさを変えると、たとえ同じ形に保っていようとも 色々なことが変わる。サイズの変化に対してものごとがどのように変わるかを 調べることをスケーリングという。

参考文献:

(1)ガリレオ・ガリレイ「新科学対話」岩波文庫(訳:今野武雄・日田節次)
(2)Philip Morrison「スケーリング:リリパッドの物理学」
   「科学者と技術者のための物理学 Ia」所収 p20-26、学術図書出版社
(3)本川達雄「ゾウの時間ネズミの時間:サイズの生物学」中公新書
(4)K.シュミットニールセン「スケーリング:動物設計論
               (動物の大きさは何で決まるのか)」コロナ社
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